甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
真っ赤になって否定するフィーネにブランドン伯爵が疑いの目を向ける。
「ふーん、それでそんなに似ているのかな、僕たちは」
「いいえ、髪の色も形も、瞳の色も違いますから、似ていると思ったのは
きっと私の勘違いで」
「でも、どうしてそう思ったの」
「どうしてって言われてもよくわからないわ、直感的にそう思ったんです
ふっと頭に浮かんだというか」
本当にどうしてだろう?
数回しか逢ったことのない人だったし、
名前も姿も忘れ去っていたというのに。
それはやっぱり、あの人に惹かれていたから?
クリスティーナが恋人と語らうのを見て、無意識に自分が昔見た夢
と重ねあわせてしまったのだろうか。
いや、でも、あの人は......。
「君が心に留めた人だったんじゃないかと思ったら、僕の心は
ざわついた。
僕が好きなのは、クリスティーナのはずなのに」
そう言いながらふーっと乱れた息を吐き、ブランドン伯爵は
くしゃりと前髪を握りつぶす。
「すまない、こんなことを言い出して。
でも、どうしても自分の気持ちを確かめたいんだ。
だから時々でいい、逢ってほしい」
もう一度、フィーネの手を握りしめ、間近からじっとフィーネを見つめる
伯爵から意識をそらすことは、もう難しかった。