甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 消え入るような声で言えば、エルストン卿は、フィーネに出身は
 どこかと問うてきた。

 どうしよう......。

 個人的なことを聞かれたら、知っている範囲で当たり障りのないことを
 話せばいいとユアンは言っていたが、大丈夫だろうか。



   「私は、ヨールドが故郷です」



 フィーネの答えを聞いた、エルストン卿は急に目を輝かせた。



   「北ですね。僕は狩猟が趣味なのですが、ヨールドは良い狩り場が
    いくつもあると聞いています。
    ヨールドのモルトン男爵と親しくしている友人がいて......
    ひょっとして、あなたはモルトン男爵のお身内の方ですか?」



 息が詰まった。

 フィーネは、そっと苦しい胸の上に手を置く。

 まさかここでモルトン男爵の名を聞くとは思わなかった。

 モルトン男爵に繋がる可能性のある人なら、迂闊なことは喋れない。



   「あの......私は......」


 どうしたらいいかわからくて、フィーネは唇を噛み、言葉をつまらせる。

 嘘をつくより他はない。

 でも、なんて?



   「......たしかに祖父がモルトン家の出ですが、
    私は......引き取られた子で」

   「引き取られた?」
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