甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 驚き固まっているフィーネにショールを広げながらエルストン卿は
 近づき、フィーネの首筋に熱い視線をおとした。

 開いたドレスと首に巻かれたリボンが、華奢なフィーネの首筋を必要以上
 に女らしく見せていることには気付かず、ただ呆然とフィーネはエルストン卿
 を見上げた。



   「隠してしまうのはもったいないですが、それでは寒いでしょう」



 そう言って、エルストン卿はフィーネの肩にショールをかける。



   「あ、ありがとうございます」



 お礼を口にしながらも、フィーネは動揺していた。

 うまく逃げだせたと思ったのに...... それに、ショールを羽織らせてくれた
 エルストン卿との距離が、いやに近い。

 慌てて身を引こうとすれば、つまずいて倒れそうになり、気がつけば
 腰に手をまわされ、片手の指先が握られていた。



   「危ないですよ」



 間近から覗き込まれフィーネはうろたえた。

 フィーネの話を不審に思ったのだろうか。

 身体を離そうとしないのは、嘘をついていると見破って、拘束しよう
 としているから?

 怯えるフィーネの視線を捉えながら、エルストン卿はそっとフィーネの耳許
 に顔をよせると囁いた。



   「貴族にとって結婚は契約のようなもの。それに縛られることは
    ないんですよ」

   「え_?」

   「恋も愛も、結婚とは別のところで知ることになっても、誰も
    咎めない」

 

 

 
 
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