甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「どうせあそこに戻っても困るだけだから、ここに隠れてろ」
とセオに言われたが、すぐにユアンが来てくれて、夫人の体調がよくない
からと、ゴードン邸を辞することになった。
馬車に乗りこめば、またすぐにユアンは目を瞑ってしまったが、フィーネは
おずおずと声をかけた。
「ユアン」
「ん?」
かすかな声で返事はしたが、ユアンは目をあけない。
いつもゴードン氏と会った後、馬車の中で疲れたように寝入ってしまうが
容姿を変えることは、ユアンの身体の負担になっているのだろうか。
でも、フィーネはどうしてもユアンに聞きたかった。
「ねえ、ユアン。まだミルズ男爵のふりは続けなくちゃいけないの?」
フィーネの問いに、ユアンはうっすらと目をあけ、力なくもわずかに
微笑むと
「あと、少しだ」
と言った。
「ゴードンはミルズ男爵を信じ込んでいる。契約書が手に入るのは
もうすぐだ」
そして、もう一度、フィーネに向かって微笑む。
「アルンたちが自由を手にいれるのも、もうすぐだよ」
そう言って、ユアンはすうっと、寝入ってしまった。