甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
その寝顔を眺めながら、フィーネは複雑な気持になる。
人を騙すということがどんなに大変か、今、フィーネは身にしみて
感じていた。
そして苦し紛れについた嘘が、さらに困った状況を生み出すということも
親に決められた結婚で、フィーネが引き取られた娘だといったから
エルストン卿は、付けいる隙があると考えたのだろう。
それに、夫婦らしくないとも思われた。
本当の夫婦じゃないんだから、そう思われても仕方ないことなのに
なぜか、そのことはフィーネを落ちこませる。
しかし、ユアンは嘘をつくことが、怖くないのだろうか。
自分は嘘の人生などいやだ、なるべく嘘のない生活をおくりたいと
フィーネは思う。
今回のことは、ゴードンにこれ以上工房を拡大しようと思わせないためと
工房の人たちの自由のためだが、ユアンは売れている劇作家らしいし
お金のために詐欺を働いているとは思えない。
身体に負担がかかるほど、容姿も人生も偽って、何が彼を
そうさせているのだろう。
嘘をつき続けることは、難しい。
それに、嘘をつき続けるとうことが、なんだかとても悲しいことのように
フィーネは思うのだった。