甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 気がつけばフィーネは頷いていて、満足げににっこりと微笑んだ
 ブランドン伯爵が口をひらく。



   
   「それでそのグリアム=フィリオという人は今はどうしているのかな?」

   「わからないわ」

   「わからない?」

   「ええ、彼は私の従姉妹と結婚するはずだった、でも、式の前日になって
    彼は消えたんです。
    花嫁が準備した持参金を持って......」

   
  
 〜*〜 〜*〜





 さあーと夏の風が吹き抜けると、さらりと黒髪が揺れ、目を細めた
 ブランドン伯爵が、フィーネを見てゆっくりと微笑む。

 二人が逢うのはいつも、東の庭の四阿だった。



   
   「それで君はどうしたの?」

   「私は泣いちゃったの、でもお父様がずっとそばについていてくれて」




 ブランドン伯爵は人の話を聞くのが上手い。

 本当は伯爵の恋愛相談を聞くために逢っていたのに、いつの間にかフィーネは
 自分が男爵令嬢だった頃の話を、問われるままに話していた。

 一人で思い出すと辛い気持ちになる思い出も、ブランドン伯爵に話していると
 まるでその時に戻ったような気分になり、幸せな気持ちにつつまれるのは、
 どんな話にも耳を傾け、一緒に笑ったり、悲しんだりしてくれる
 からだろうか......。


 
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