甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「......」



 ヨレヨレのハタキを目の前に掲げて、呆然としているフィーネにユアンの
 馬鹿にしたような声が届く。



   「たいした掃除の仕方があったもんだな」



 な、なによ、誰のせいだと思っているの。

 でも、そんなこと口が裂けたって言えない。

 フィーネが黙り込むと、ユアンがまたぞんざいな口調で言った。



    「コーヒー」

    「は?」

    「だから、コーヒー」



 ユアンの目の前に地図とともに置かれた紙は、まだ何も書き込まれておらず
 白いままだ。

 考えがまとまらないので、ユアンはコーヒーでも飲んで、気分をかえようと
 思ったのだろう。

 そうわかるのに、フィーネはなぜか ” はい ” と素直に言うのを躊躇った。

 というか、言いたくなかった。

 わけのわかない腹立たしさがむくむくと湧き上がる。



   「その言い方ってどうなの」

   「は?」

   「人にものを頼むのに、そういう言い方はどうかって言ってるの!」
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