甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
完全な八つ当たり。
だっていつもユアンは 「コーヒー』の一言ですませていたし、
フィーネは当たり前のように、「はい」と返事をして、コーヒー
を淹れていたのだから。
だから、こんな風に意固地になれば、ユアンは腹をたてるだけだろう。
そう思ったのに、ユアンはちょっとむっとした顔はしたけれど、ふぃっ
と横をむくと、ぼそっと小さな声で言った。
「コーヒーを、お願いします」
小さな男の子が、不貞腐れて、仕方なく "ごめんなさい" を言うときみたいに
ちょっと口を尖らせて、そっぽをむいて。
きゅん ♡
フィーネの胸の奥で、なんだか不思議な音がした。
_ _あ、あれ?
フィーネは狼狽える。
_ _ なんだろう、これは?
みょうに甘酸っぱい想いが胸の内に満ちてくる。
だが、フィーネはそれを、なんとか抑え込むと、あえて、冷静な声
をだした。
「わかりました。只今、準備をしてきます」
背筋を伸ばし、一歩一歩慎重に足を運び、部屋をでて、まともにユアンを
見ないまま、室内に向かって深く一礼すると、フォーネは静かにぱたんと
ドアを閉めた。