甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 若い娼婦には恋人がいるが、その彼が浮気をしたらしい。

 ハンサムだが、女好きでわがままなその男と付き合うのはやめろ
 とまわりの者が言っても、若い娼婦はずるずると関係を続けている。



   「浮気だけじゃないんです、お姉さん、その男の人にお金も
    貸してるみたいで」

   「呆れた、その上、男がお金を返さないとかいうんじゃないでしょうね」

   「どうもそうみたいです」


 まだ泣きながらも、先輩娼婦につれられて去っていく姿を見送りながら
 フィーネは腹ただしくなった。

 その男、最低だ。

 娼婦とはいえ、一途に相手を思う気持ちが、涙ながらの声にあらわれていた。



    「なんだって、そんな男に」



 とフィーネが言えば、マリーも頷く。

 と、その時、話など聞いていないかのように鍋をかきまわしていたドゥーラが
 口をはさんだ。



   「惚れた弱みじゃな」

   「そうですね、酷い男だとわかっていても、お姉さん、本当にその人の
    ことが好きで、言うこと聞いちゃうみたいです」


 相手が、最低で最悪な男だとわかっていても、
 相手の言う通りにしてしまう......。

 突然、ユアン顔が頭に浮かび、フィーネの頬がぼっと火がついたように熱くなる。

 あぁと、フィーネは心の中で情けない声をだした。

 _ _ 惚れた弱み __

 ドゥーラの言葉が、頭の中をぐるぐる回る。

 ぐるぐると四、五周ほど回ったその言葉は、フィーネの心のある場所に
 すとんと収まった。

 ...... どうやら、私は、ユアンのことが、好きらしい。

 それも、しっかり、惚れてしまっているらしい......。



   「どうしたんですか、フィーネさん? 顔、真っ赤ですよ」



 慌てたようなマリーの言葉を遠くに聞きながら、あぁと、フィーネはもう一度
 心の中で情けない声をだした。
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