甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「明日ですべてが決まる。だからよろしく頼むよ」
背中を向けたままそう言ってユアンが出て行ったドアを、フィーネは
ぼんやりと見つめた。
そこから目をそらせば、今度は解かれてベッドの上に折り重なっている
リボンが目に入り、フィーネは緩んだ襟元をぎゅっと握りしめる。
ユアンはなにもしなかった。
〜〜〜
ユアンの指が首筋を辿るのを感じながら、フィーネは目を閉じていたが
すっと指は離れていき、それきり、何もおこらない。
目をつぶっていても、すぐそばにユアンを感じ、自分に注がれる視線も
感じるのに、なにもないことを不思議に思い、うっすらと目を開ければ
苦しげな表情でフィーネをみつめるユアンがいた。
「ユアン」
フィーネの口から漏れた名前に、ユアンの肩がぴくりとする。
そして、ユアンはまるで夢から覚めた、というような顔をして身をおこした。
そのままベッドをおり、ユアンはフィーネに背を向け、ドアへと歩き
フィーネの方を見ないまま、”よろしく頼む” と言い置いて、
部屋を出て行った。
〜〜〜
襟元をぎゅっと握りしめたまま、フィーネは、ほっと息を吐く
なにもなくてよかったのだ、だって夫婦でも、恋人でもないもの。
でも、それはすぐに突き上げるような悲しみにとって変わった。
ユアンはなにもしなかった......あのとき、私は...... ユアンを受け入れよう
とした......のに。
ぽろぽろと大粒の涙が、フィーネの頬をこぼれ落ちる。
拭きはらっても、拭きはらっても、涙はいつまでも、こぼれ続けた。