甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ユアンの仕事用の広いデスクの上に、蓋に彫り込みのある木箱をのせ
セオは、どうだ、と言わんばかりに、腰に手をあてて胸をそらせた。
「形、色、蓋の彫り、すべて本物そっくりに仕上げた。細く見れば
違うところもあるが、簡単にはわからない」
「うん、いい出来だね」
「当たり前だ、但し中身はただの紙」
本物の木箱には、ゴードンが工房と交わした契約書が入っている。
ユアンは明日、木箱ごと契約書をいただくつもりだ。
ゴードンがほんの少し目を離したわずかな時間に、本物と偽物を
取り替える。
ゴードンを木箱から離れたところに誘い、たっぷりと時間をとって
中身をすり替えた方が確実だが、用心深い彼のことだ、疑いを持つ
可能性も多いにある。
だから、彼の注意をそらす時間は長くない方がいい。
木箱ごと取り替えるに足りて、それでいて疑いを持たれないほど
短い時間。
そのためにセオが、ゴードン邸にもぐりこんで、木箱を写しとり
本物そっくりの物を作った。
すべては明日、一瞬で決まる。
「それで、重要な役割をはたすフィーネに計画は話したのか」
「いや、まだだ」
その返事に、セオは器用に片眉だけあげ、なぜ?と問う顔になった。
「どうせあいつはいろいろ考えて、今晩寝られなくなるだろ
プレッシャーを感じる時間を減らして、勢いでやらせた方がいい」