甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「ふーん、フィーネのことよくわかってるんだな」



 真面目な顔でセオがそう言えば、ユアンはぷいっと顔を横にむけ、



   「そんなんじゃない」


 とぽそりと言った。

 その態度にセオはまた器用に片眉を上げたが、何も言わず二、三の確認を
 すますと片手を上げて、部屋をでていく。

 一人になり、ユアンはどさりと背もたれにもたれると、ふーっと息を
 はいた。

 薄いトランプを組んで高い塔を作るときのように、慎重に進めてきた計画は、
 明日にはすべてが終わる。

 どこにも不備はない。

 どこにも偏りはない。

 いつものように、今、自分の心は深い森の湖のように落ち着いている。

 

 だが、本当はそうではないことをユアンは感じていた。

 心がざわつくのは、計画のせいじゃない。

 今、ユアンの心を落ち着かなくさせているのは、フィーネのことだ。

 ここ数日、フィーネの様子はおかしく、明らかにユアンを避けていた。

 避けられていたことと、” 妻じゃない ” と激しく言われたことが気に
 入らなくて、だからちょっと意地悪をしてやる、ぐらいの気持ちだったのに。

 ベッドに縫いつけて、襟のリボンを解いて、フィーネが自分を怖がれば
 それで満足、のはずだったのに。

 広げた襟元から、なめらかな素肌に触れたら、本気でフィーネを
 抱きたくなった。

 欲情とともに、いつもとは違う気持ちも湧きあがる。
 
 自分のものにしてしまいたい、身体を? いや、フィーネのすべてを。


 
 
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