甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 その気持ちに戸惑いながらも、ユアンを受け入れるようにフィーネの
 身体から力が抜ければ、あとは自分の好きにできるはずだった。

 でも......。

 薄く開いたフィーネの唇が、かすかに震えているのを見たら
 それ以上は進めなくなって、ユアンは動揺した。

 なぜだ、たとえ欲情しなくたって、女は抱ける、
 いつだって、どんな女だって抱いてきた。

 自分の身体の下に組み敷いて、炙られるような欲を感じている、なのに
 躊躇いがユアンを縛る。

 こんなにも熱いのに、どうして......。

 結局ユアンはフィーネの上から身をどけると、ベッドをおりて部屋をでた。

 しばらくして寝室からでてきたフィーネの目が、泣いたあとのように
 赤くなっていて、泣くほど嫌だったのか、と思ったら今度は、胸の中が
 苦しかった。

 今も胸の内が苦い。



   「くそっ」



 ユアンは忌々しげにそう吐き出すと、勢いよく立ち上がり、本棚の奥から
 ウイスキーの瓶をとりだして、勢いよく煽った。

 かっと喉がやけ、濡れた唇を拭えば、頭の中に冷静な声が響く。

 ” 明日のことを考えれば、酒など飲むべきじゃない ”

 でも、酒瓶を手放すことは難しく、ユアンは強くそれを握りしめた。
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