甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 
 
 ......私、ちゃんと茶葉を三杯いれたかしら......?
 
 まるで自分の手じゃなくなったみたいに、手元がおぼつかない。

 ソーサーを持つ手が震え、カップがカチカチと音をたてる。

 カップを乗せたソーサーを手に、後ろからゴードン氏に近づいていきながら
 フィーネは不安になった。

 どうしよう、カチカチ鳴るカップを不審に思われたら。

 助けを求めてユアンを見たけれど、ユアンはミルズ男爵の顔で、薄く笑んだ
 まま、ゴードン氏を見ているだけだ。

 ” 上着にだけだ、うまく紅茶をかけろ ” 

 ユアンの声が、もう一度心の中に響く。

 そんなふうにうまくなんて、出来るわけがないじゃない!

 どうやればいいか、わからないんだから!

 もう、どうにでもなれ、と、とうとう捨て鉢な気持ちになって、フィーネは
 ずいっと手に持った紅茶のカップをゴードンにむかって差し出した。



   「お茶を......」



 そう言いかけて言葉が止まる。

 ちょうど、上着の裾をはらったゴードンの腕が、トンとカップの縁にあたり
 カップが傾いたからだ。



   「あっ!」



 パシャ

 ゴードンの上着の袖に紅茶がかかり、カップが絨毯の上に転げた。
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