甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 ホテルの従業員に頼んで、汚れを拭き取り、アイロンをあてた
 上着を持って部屋にもどれば、ゴードン氏は、上機嫌な顔で
 笑い声をあげていた。

 綺麗になった上着に腕を通すのを手伝いながら、フィーネはちらりと
 ユアンを伺い見たが、ユアンは、ミルズ男爵らしくいつもの穏やかな
 笑みを浮かべているだけだ。

 上着を着終わったゴードン氏が、そろそろ失礼すると言い、木箱を
 持ち上げる。

 何事もなく帰る氏を部屋のドアのところまで見送り、ドアを閉め
 ふりかえったユアンが、にっと笑ったのを見て、フィーネはぱっと
 両手を握りしめた。



   「上手くいったのね!」

   「まだだ」



 そう言って、ユアンは大股で窓辺へ行き、通りを見下ろし、ゴードンがホテルをでて、
 通りの向こうに消えるのを確かめたユアンは



   「よし」



 と、小さな声で呟くと、フィーネをふりかえったが、フィーネが口を開く
 間をあたえず、早口で言った。



   「すぐに僕らも、ホテルを出るんだ」
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