甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 フィーネは一人、ダイニングテーブルの椅子の座り、組み合わせた
 両手を額に当てて俯いている。

 ユアンが帰ってこない。

 フィーネはこの嵐が、神の裁きのように感じていた。

 嘘をついた、すべてを偽り、人から違法に物をとりあげた。

 それとも、真実を知ったゴードン氏の怒りが、この嵐を呼び寄せた
 のだろうか。

 このままユアンが帰ってこなかったら......。

 と、その時、なぜか部屋中のろうそくの明かりがふっと消え、フィーネは
 堪らず、ガタンと椅子をならして立ち上がった。

 と、同時に、玄関の扉がバンと勢いよく開き、激しい雨風が吹きこんで、
 闇を切り裂く稲光を背に、黒い人影が玄関口に立つ。

 その黒々とした人影が、怒り狂って現れたゴードンに思えて、フィーネは
 あっと息を飲んだが、再び走った稲妻が浮かび上がらせたのは、金の髪
 に冷めた瞳の色のユアンだった。

 涙交じりの目で、じっとユアンを見つめるフィーネに、大股で近づいたユアン
 が、フィーネの腕をむんずっと掴む。



   「急げ、出発だ」

   「えっ」



 何もわからないまま、フィーネは家から連れだされ、外で待っていた馬車に
 押しこめられた。

 

 

 
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