甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ゆっくりと目を開ければ、見慣れない天井が目に入った。
窓の外からは鳥のさえずりが聞こえ、カーテンの隙間から差し込む
陽光が良い天気だと知らせてくれる。
嵐は、すっかり去ったのだ。
フィーネはほっとし、まだ残る眠気にまた瞼を閉じそうになったが、
はっと何かに気づいたように目を見開くと、がばっと起き上がった。
「ここは......いったいどこ?」
眠っていたベッドは、なかなか上等なものだ。
部屋は広くないが、趣味の良い家具で統一されている。
ベッドの傍らに、椅子の背にかけられたドレスと、メモを見つけて
フィーネはそれを摘みあげた。
” 着替えて降りておいで、一階で待ってる ”
サインはないけど、ユアンの字だ。
そうだ自分は昨日、いきなり馬車に乗せられたのだ。
嵐の中を走り出した馬車の中で、フィーネはユアンに いったい
どういうことか と問うたけれど、いつものようにユアンは片手でフィーネ
を遮ると、すぐに寝入ってしまったし、そしてそのうち、フィーネも眠く
なって......。
相変わらず、ユアンのやることは唐突で、訳がわからない。
がっくりと肩を落としながらも、フィーネはとにかくベッドからおりた。
服を着替え、一階に降りる。
どうやらここは、貴族か裕福な商人が趣味の狩猟を楽しむために建てた
狩猟館らしい。
壁には狩った獲物を剥製にしたハンティング・トロフィーがいくつか
かけられているし、広い窓の向こうには、冬でも葉を落とすことのない
黒い針葉樹の森が見える。