甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ガラガラガラという車輪の音が頭に響いてフィーネは、んっと
かすかにうめき声をあげると、重い瞼をひらいた。
ぼんやりとする目の前に座っている人がいて、自分はどうやら
走る馬車の座席に寝かされているらしい。
ゆっくりと目線をあげると見覚えのある顔が窓の方を向いているのが
見えた。
「ブランドン伯爵......」
弱々しく呟いた声に気づいたのか、窓の外に向けていた視線をはずし
彼はフィーネを見る。
「やぁ、やっと気がついた?」
いつものように屈託のない声は確かに彼のものなのに、フィーネは
何かが違うと感じた。
よく見れば、髪の色や長さが違う、それに瞳の色も。
でも最初に見た時、フィーネは彼がブランドン伯爵だと思った。
「やっぱり君にはわかるんだね」
ブランドン伯爵の声で目の前の男は言う。
「あなた、誰なの?」
そう聞いたフィーネに、彼はくっと小さく笑い声を漏らすと
すぐに大きな口を開いて、今度は笑い声を爆発させた。
しばらく大声で笑った後も、声もだせずお腹を抱えている。
そしてフィーネの方を見ると、前髪をかきあげながらやっと
口を開いた。