甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ワゴンに乗せた朝食のプレートを、セオが丁寧にテーブルに置くと
ナイフとフォークを取り上げたユアンが、オムレツをきりわけ口に
運ぶ。
マナーに則り、その姿は優雅で上品だ。
狩猟館の日々が始まって、一週間がたとうとしていた。
その間、ユアンはレナルド=オルセン伯爵として、フィーネはその
妹エリザとして、セオは従者アルバートとして過ごしている。
三人だけだから演じる必要なんてないんじゃないのと言えば、
「娼館の家は我々のテリトリーだったからね、でも、ここは
違うから」
とユアンは言った。
変えているのも髪の長さだけだから、身体への負担も少ないらしい。
そして、ほとんど何処かへ出かけてる。
セオがいてくれなかったら、フィーネはひとりぼっちで途方にくれて
いただろう。
セオは二人だけのときには、フィーネをフィーネとして接してくれる。
かちゃりとナイフとフォークを置いたユアンが、優しい兄の顔で
フィーネを見た。
「今日は一緒にでかけよう、エリザ」
エリザと呼ばれると少しだけ悲しくなるが、そんなことはおくびにも
出さず、フィーネもわざとらしく答えた。
「まぁ、どちらへ? お兄様」