甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「もう、十二月に入ったのに、ミシュナーのリースを準備していなかっただろ
マーケットに出ているはずだ」
「え、ミトラ祭を祝うの?」
フィーネはエリザになるのも忘れて、素のままに叫んでいた。
十二月の一年で一番夜が長くな日、光の神ミシュナーの加護を受けるため
神がその頭に乗せている冠を模して、グースベリーの蔓と枝で編んだ
リースを飾りお祝いする。
フィーネの生まれたヨールドでは大切にされてきた行事。
十二月に入ると、家族や友人または恋人と選んだオーナメントを毎日一個ずつ
リースに飾り、ミトラの日を待つ。
そしてミトラの日には、完成したリースの下で長い夜を楽しく過ごすのだ。
ユアン、いや兄であるオルセン伯爵と訪れたペンリスの町は、ジャブロウ
よりは小さかったが、活気にあふれた町だった。
ペンリスに来てはじめての外出ということもあって、フィーネにはすべて
が珍しく、きょろきょろしてばかりいる。
「おい、迷子になるなよ」
レナルドお兄様ではない、久しぶりに聞くユアンらしい乱暴な言葉に
ぷうと膨れて見せながらも、嬉しい気持ちがフィーネの胸にわきあがる。
「なんだか、本当に餓鬼をつれて歩いているみたいだな」
「どうしてよ」
「はしゃぎすぎ」
「はしゃいでなんか、いないわよ」
「なんだか浮かれてないか?」
「う、浮かれてもいないわよ!」