甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「ねえ、ユアン、あなた本当は貴族の生まれなの?」
そう尋ねたフィーネの言葉に、ユアンは口へ運びかけていたカップ
をぴたりと止めた。
「いや」
短く、カップに視線を落としたままユアンは答える。
「そう? でも、あなたとても貴族らしいわ、いくら演じるって
いっても育ちの違いはどこかでわかるもの」
ジャブロウにいたころは言葉使いも乱暴だったし、くだけた姿だったけど
でも、ユアンはどこかに品の良さを感じさせるところがある。
だが、そんな考えを遮るように、かちゃんとカップをソーサーに戻す音がした
「さぁ、もう行こう」
ユアンが立ち上がり、唐突に言う。
いきなりの言葉にフィーネは驚いたが、飲みかけのカップを置いて
立ち上がった。
怒ったようにはみえないが、微かにだがユアンの瞳の奥に以前感じたのと
同じ冷たさがあるような気がして、フィーネは戸惑う。
私、なにかいけないことを言ったかしら。