甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
だが、今日の目的のオーナメントの店に行けば、フィーネは感じていた
気がかりをすっかり忘れてしまった。
枝と蔓だけのリースにリボンを巻いて、飾るオーナメントは小さなものだが、
好きな形のものが選べれる。
木でできたもの、ガラスでできたもの、いろんな素材のいろんなオーナメント
があったが、フィーネはレース飾りを選んだ。
単純に丸く編まれたものもあるが、星型や花が立体的に編まれたもの、
ベル型、小鳥型なんていうのもある。
どれがいいかしら?
熱心に見ているフィーネの横から覗き込むユアンも楽しそうで、先ほど
感じた冷たさは、どこにもない。
「どれがいいと思う?」
「そうだな」
ユアンが手に取ったのは、ヘキサグラムの形に編まれたレース中央に、
淡い光をふくむグリーンのガラスがつけられたもので、それをフィーネの
顔の横にもっていき、ユアンは口許に緩やかな微笑みを浮かべた。
そして、何かを確かめるように、ユアンはオーナメントとフィーネの顔を交互
に見て、
「うん、これでいい」
と満足げに笑う。
あの時の、グリーンサファイアと同じ色......。
私の瞳と同じ色......。
ユアンはグリーン色が好きなのだろうか、それとも私の瞳の色が?
とくん、とくんと胸が鳴りはじめる。
オーナメントを包んだ紙の袋を店の女の子から受け取ると、フィーネは
震える胸も一緒に抱え込むように、大切に胸に抱えた。
「嬉しそうだね」
ユアンにそう言われ、フィーネは頷く。
いつになく、素直な気持ちになる。
「ええ、とっても」
弾んだ声でフィーネはユアンにそう答えた。