甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
あとは、土台となるグースベリーのリースを買うだけだ。
リースは町の中央にある噴水広場の露店で売られているようで
二人は広場へと足をむけた。
中心に向かって四角く切りとられた石畳がならぶ広場は、その名の通り
真ん中に大きな石造りの噴水があるが、冬季の今は、わずかな水が
ちろちろと流れでているだけだ。
ぐるりと噴水を回るように歩いていたフィーネは、側を歩いていた
ユアンがいないことに気づき、後ろを振り返った。
ユアンは少し離れたところで立ち止まり、懐中時計を見て、それから
なにかを探すように、周りに目を向けている。
どうしたんだろう?
だがすぐに、ユアンは時計をしまいながらフィーネに向かって歩き
はじめ、フィーネはそんなユアンに微笑みかけた。
「露店はあっちだよ」
近づいたユアンがそう言いながら、そっとフィーネの背中をおす。
促されるまま足を踏み出したフィーネは、なぜかその時、さっと前に
だされたユアンの足につまずいて転んでしまった。
みっともなく石畳の上に膝をついて転んだフィーネのとなりにユアン
がしゃがみこむ。
” だいじょうぶかい ”と言いながらしゃがみこんだユアンは、ぐっと
フィーネの首の後ろを押さえ、フィーネが立ち上がれないようにすると
強い口調で囁いた。
「そのまま下を向いているんだ」
えっ?
ユアンの押さえる力が強くて顔を起こせない。
ユアンの行動と言葉に戸惑い、力の強さに少し恐れを感じて声もだせない。
だがその時、石畳しか見えなかったフィーネの視界にブラウンのドレスの
裾が見えた。