甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
セオが帰ってしまったので、近くを通るという馬車に便乗して
帰ってきたユアンは、暗い狩猟館を見て訝しんだ。
誰もいないのか?
キィと玄関のドアを開けて中に入れば、厨房の方から微かに灯りが
漏れている。
そちらにいるのかと厨房の方へ足をむけたユアンは入り口で足を止めた。
ワインの瓶に立てかけられた、レースのオーナメントを飾ったグース
ベリーのリース、キッチンテーブルに広げられたささやかな料理、
かちりとワイングラスを重ね、セオにむかって笑いかけているフィーネが
いた。
セオの表情は背中を向けているからわからないが、
きっと笑っているんだろう。
セオが何か言って、フィーネが笑い声をたてた。
久しぶりに聞く笑い声。
そういえばここのところフィーネはずっと笑っていなかった。
体の弱いエリザの役を演じているからそうなのだろうけど、
最後に彼女の笑い声を聞いたのは、ペンリスの町でオーナメントを
買ったときだったなと思い出す。
あの時、肝心のリースを買わなかった。
でも、今、オーナメントは綺麗にリースに飾り付けられていて
グリーンのガラス玉がぴかりと光る。
フィーネの瞳の色と同じ。
そうユアンが思ったとき、セオが動いてフィーネの額にキスをした。
満足そうに微笑んだフィーネがセオの頬に手をあてて......。
フィーネがセオの額にキスをしたとき、ずきっと胸が痛みユアンは
くっと胸元を掴んだ。
足早にそこを立ち去る。