甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 静かに階段をかけあがり、自分の部屋に駆け込んで窓辺に
 手をついたユアンは、はっと息をはきだした。

 なんてことはない、額のキスはミトラ祭の風習だ。

 自分だって、今日イリーナとキスを交わした。

 だからフィーネとセオだって。

 でも......、もしフィーネが心からの愛情を込めて、セオにキスした
 のだとしたら。

 それに、セオのキスを受けたときの、あのフィーネの表情は。

 セオはいい奴だ。

 あいつにも特別な力はあるが、それはわずかなもの、使わなければ
 消えていく。

 自分のような化け物とは違う。

 それに......あいつは、僕ほど汚れてはいない......。

 そうやって冷静になろうとするのに、胸の苦しさは消えていかない。

 とうとう力が尽きたというように、ユアンはがくんと膝をおり、
 窓辺についた腕の中へ、ゆっくりと顔を埋めた。
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