甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
とりあえずペンリスにいるうちに、一度ヨールドへ行ってみよう
と考えたフィーネは、セオを探している。
とにかく必要なのはお金だ。
これ以上ユアンに借りをつくるわけにはいかないので、セオに頼む
ことにする。
館の中には姿が見えなくて、外に探しにでたフィーネはエインズワース家の
馬車が停まっているのを見て、訝しんだ。
イリーナが来ているのだろうか。
でも、館の中にはいなかったから、二人は多分、森にいるのだろう。
そう思いながら近づくと、馬車の近くの縁石に少年が腰かけていた。
ふわふわの光に透けるような銀の髪。
物音に気づいて、フィーネの方をむいた瞳は、かすかにくすんだ
セルリアン・ブルー。
「エインズワース家の人?」
そう聞けば、少年は黙ったまま頷いた。
「いつもの御者の人は?」
「足を痛めて休んでる」
じゃあ、あなたが御者なのね、とフィーネが言えば少年はまた、黙ったまま
頷いた。
彼はズボンのポケットに手を突っ込んで座っていたが、シャツ一枚で上着
ひとつ着ていない。
いくら天気がいいからって、それでは寒いだろうと思ったフィーネは
「まだ、イリーナさんは戻ってこないわ、厨房でよかったら
中に入って」
と少年を誘った。