甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 厨房のストーブの火を掻き立て、そばに椅子を置くと、少年は
 素直にそこに座った。



   「紅茶を飲む? それともココアの方がいいかしら」

   「なんでもいい」


 少年のぶっきらぼうな返事に、フィーネはくす、と笑った。

 無愛想な子、でも美しい子だ。

 なんていうか、ふわふわとした儚げな美しさがある。

 そのとき、目の前の少年が森の中にふっと消えていく、そんな情景が
 心に浮かんでフィーネは目を瞬かせた。

 気づけば、じっと探るような目で、少年がフィーネを見ている。

 なんだったんだろう? 今の。

 そう思いながらも、ミルクを温めココアをいれて、少年に渡そうと
 近づくと、立ち上がった少年に手首を強く握られ、フィーネはだんっ
 と壁におしつけられた。

 息がつまり、突然のことにフィーネの頭は混乱する。

 フィーネを身体を押さえつけ、顔を近づけた少年が、低めた声で問う。



   「なにを見た?」



 なにって?......さっき消えていくように見えたことだろうか。



   「ふっと......消えていくように......」



 押さえつけられる痛みに堪えながらそう言うと、少年が目を細めた。



   「厄介だな、見えるとは」


 そう言ってにやりと笑った顔は美しいが謎めいている。

 その笑みに、少年が人ではないもののような気がして、怯えるよりも
 先に、なぜかふーと身体の力がぬけていく。

 訳がわからないまま、ぼうっと少年の顔を見つめていると、少年の指が
 フィーネの顎をもちあげ、その顔が近づいた。
 
 
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