甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 パチ、パチと時々薪の爆ぜる音がする。

 静かな中で、聞こえるのはそれくらい......ううん、心臓の音が聞こえる。

 ユアンといるこの場所だけが世の中から切り離されて、ここにある、
 そんな風に感じるのは、そうなって欲しいとフィーネが無意識に
 思っているからかもしれない。



   「前に、僕が貴族の生まれかって聞いたことがあっただろ」



 唐突にユアンが口を開いた。



   「母親は娼婦だった、父親は誰かわからない」



 静かな口調で、ユアンが話しはじめた。



   「娼館で生まれ、僕は育った。母親は僕を嫌ったけど、娼館の
    女主人が可愛がってくれた。
    でも、十歳のとき、母親は僕を売った。
    十二歳以下の子供の売買は法律で禁止されている。でも、金の前では、
    法なんてなんの力もない。僕は貴族のおもちゃになった」

   「おもちゃ?」

   「美しいものをコレクションすることが生きがいの、歳とった貴族の
    男だった。僕はコレクションのひとつ。
    さらに美しく磨いてやろうって言われて、教育をうけた。
    語学にマナー、スポーツに音楽、ありとあらゆることを学ばされ、
    そして、夜は......性を教え込まれた」

   「え?」



 わけがわからず、振り向こうとしたフィーネを振り向かせまいとするように
 ユアンはフィーネを抱く腕に力をこめる。

 身動きできなくて、フィーネはただ、ユアンの声をきくよりしょうがなかった。







 
< 173 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop