甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「sexを教えこまれたんだよ。そして何年もかけて僕を育てた
    その男は、そのうち僕を他に貴族に貸し出すようになった」

   「......」

   「何人もの人間の相手をしたよ、若いのもいたし年寄りもいた。
    男も女も関係なかった。
    時には何人もの貴族の前で処女を犯すようなことまでやった。
    命令されてね。
    やつらが思いつくようなことは、全部やらされた」

   「そんな!」



 フィーネの悲鳴のような声にユアンはふっと息を吐く。



   「僕は汚れてる。
    そして十七歳になったとき、その貴族の男は宝石の呪いのためか
    わからないけど、ある日忽然と姿を消した。
    僕は自由になるチャンスを手にいれた。僕をひきとろうとした
    貴族は結構いたけど、僕は逃げだし、逃げるときに持ちだした
    金でちょっとした商売をはじめた。劇場のチケットの斡旋さ。
    セオと知り合ったのはちょうどその頃。

    それから劇場に出入りするうちに、見よう見まねで脚本を書くように
    なって、それが今も続いてる」



 なんていう告白だろう。

 生まれながらの貴族のような品の良さと優雅さ、そして誰もの目を引く
 華やかさの裏に、そんな残酷な過去があったなんて......。

 胸がつまり、なんて言っていいのかフィーネは言葉が見つからず、
 ただ、目の前にあるユアンの手をぎゅっと握る。

 それだけでは足りないような気がして、ユアンの手を持ち上げると
 フィーネは自分の額におしつけた。

 貴族の生まれだとフィーネに冷たい視線を向けたのも、法を犯せない
 といったフィーネに怒りをぶつけたのも、辛い過去のせいだった。
< 174 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop