甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「あなたがどういう人かってことはわかったわ。
それで私をどうするつもりなの?」
そう問えば、彼は天井に向けていた顔をゆっくりと前に戻し
冷たい目でフィーネを見た。
「どうしようか...... この世から消えてくれれば、僕としては
ありがたい」
告げられた言葉に震えが背中をかけのぼる。
殺されるんだわ、私。
秘密を知ったから。
「でも、殺しは好きじゃないんでね。
だけどあのまま君を伯爵邸に置いておくわけにはいかない。
伯爵は過去に一度、宝剣を手放してるが、無理をしてでも
買い戻した人だ。
宝剣を取り戻そうと、君を使ってどんな手に出るかわからない。
だから君を連れてくるよりしょうがなかった」
殺されるわけではないとわかったものの、淡々と告げられる言葉に
フィーネの震えはとまらない。
冷たくフィーネを見据えたまま、にやりと口許を歪めた彼は
さらに言葉を続けた。
「この出会いが偶然なのか、運命なのか、今はまだわからないけど
君は僕にとっては危険なんだ。だから、これからは僕と一緒に
いてもらう」
整った顔に悪魔のような微笑みを浮かべながら彼がそう言った時、
軽快に走っていた馬車が、がたんと音を立てて止まった。
「ああ、着いたな」
彼は、窓の外を見る。
そしてもう一度フィーネに視線を戻すと、今度は無邪気とも言える
笑みを浮かべた。
「僕らの寝ぐらへ、ようこそ」
そう言って、彼は馬車の扉を開けた。