甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 フィーネは、はっとした。

 ユアンはどうなったのだろう、彼は取り込まれなかったのだろうか。



   「この中にいるのは私だけ? 他に人はいないの?」

   「あそこだ」



 そう少女が指差せば、目を閉じ横たわるユアンの姿が見えた。

 フィーネは駆け寄ろうとしたが、見えない壁のようなものに阻まれ
 近づけない。

 髪は短くなり、ユアンは元の姿にもどっていたが、フィーネがいくら
 名を呼んでも、ぴくりとも動かなかった。



   「死んでいるの?」

   「息はある、だがもう目覚めない」

   「そんな......」



 へなへなと座り込んだフィーネを見て、次に横たわるユアンに視線を
 投げかけた少女は、なにか眩しいものでも見たかのように、ふっと目を
 細めると ” 同じものをもっているんだな ” と呟いた。



   「恋人なのか」

   「違うわ」



 力なくそう言ったフィーネの言葉に、少女はすこし考え込むように黙ったが
 くっと口の端をあげると



   「助けたいか?」



 と言いながら、フィーネのそばに屈みこんだ。
< 183 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop