甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「ひょっとして、湖の精霊が愛したのはあなた?」

   「僕も彼女を愛していた、だから彼女といたかった。
    だから人ならざるモノになって、彼女が石になってからも
    ずっと彼女を見守っていた。

    さあ、その石を湖に投げて。そうすれば彼女は元に戻れる」



 少年はフィーネを促し、頷いたフィーネはサファイアを高く放り投げた。

 月の光をうけてサファイアは煌めき、その後を追うように少年が飛ぶ。

 ポチャンと水の中に落ちたサファイアから、ゆっくりとオーロラの光のような
 ものが立ち上がり、宝石の中で会った少女が姿をあらわす。

 と、ともに、忽然とフィーネの前にユアンも現れた。

 まだ意識の戻らないユアンは力なくフィーネにもたれかかり、フィーネは
 ユアンを抱きとめながら、尻もちをついた。



   「ユアン!しっかりして」



 フィーネの呼びかけに、ユアンはうっすらと目を開けたがまたすぐに
 目を閉じてしまう。



   「しばらくは、夢と現を行ったり来たりするだろう」



 いつの間にそばにきたのか、手を取り合った少年と湖の精霊が、フィーネの
 そばにいた。



   「本当にユアンは大丈夫?」

   「心配ない、だが、情けない男だな。本当の幸せに手を伸ばせないで
    いる」



 呆れたような精霊の声に、少年がくすっ、と笑う。
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