甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「サファイアの呪いは無くなった、君たちは帰れる。でも、君が
    その男から離れたいと思っているのなら、その願いも叶えて
    あげれるよ、折角淹れてくれたココアを台無しにしたお詫びだ。
    君は、故郷へ帰りたいと思っていただろう?」

   「それは、そうだけど」



 この少年に初めて会ったのは、ちょうどそんなことを考えている時だった。



   「モルトン男爵令嬢に戻してあげよう。君は無事に家を継いで、
    すべてを奪われることはなかったということにできる。
    ボルドール家に行くこともない」



 懐かしい我が家に帰れる。

 奪われたものを、取り戻すことができる。

 心動かされる話だった。

 でも、ボルドール家に預けられるという運命も変わるなら、ユアンと出会うことも
 セオやマリーや、アルンたちと出会うこともなくなるのだろうか。



   「なぜ、そんな惑わすようなことを言って意地悪をする?」



 少女の姿の精霊が、小突くような素振りをしながら少年に言った。



   「こいつは」


 と、少年はユアンを見下ろすと、



   「サファイアを持ち出そうとしたからね」


 と意地悪な声をだした。
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