甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 呆れたという顔で、精霊の少女は少年を見たが、ふっと真顔に
 なると、フィーネの顔を覗き込んだ。



   「今すぐ決めなくてもいい。本当に迷いない願いが決まった時
    我らはその願いを聞き遂げよう」


 そう言って身をおこし、少年に微笑みかける。

 少年が愛しげにその手を取ると、淡い光が二人を包み、二人の姿がすうーと
 薄くなっていく。

 完全に消えてしまう前に、こそっとひそめた精霊の声がフィーネの耳許でした



   「その男にはちょっとした細工をしておいた、胸に持つ同じ輝きを
    大切にしなさい」


 声とともに気配が完全に消えた頃、



   「おーい」


 と呼ぶ、人の声がして、道の向こうで、チラチラと灯りが動いた。

 灯りを手に、雪を踏みしめて走ってきたのは、セオだ。

 突然現れたセオにフィーネは驚いたが、雪深い森の中でフィーネと
 気絶したユアンを見つけたセオも驚いていた。

 久しぶりに狩猟館に帰ったセオは、見たこともない銀髪の少年と会い、
 訳がわからないまま連れ出されたらしい。

 気がつけば森の中にいて、何かに呼ばれるように歩いてきたらフィーネと
 ユアンがいた、とセオは言った。

 

 セオがユアンを負ぶって歩き、歩きながらフィーネは、ブルー・サファイアを
 手に入れた後、何があったかをセオに話した。

 そして三人は狩猟館に戻ってきたが、ユアンは一度も目覚めない。

 でも、ブルー・サファイアを持ち出し、それがなくなったこの状況でいつまでも
 ここにいる訳にはいかなかった。

 後のことはセオにまかせ、夜が明けるのを待ち、フィーネは目覚めぬユアン
 とともに、ジャブロウへと出発した。
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