甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 いくつものテーブルに長いカウンター、見上げた二階には
 廊下に面して、部屋のドアが並んでいる。

 馬車から降ろされ、促され入った建物は、町外れにある
 宿屋と食堂が一緒になったものらしかった。


   「ユアン!ひさしぶりだねぇ」


 突然聞こえた大声に目を向ければ、胸元のあいたドレスを着た
 胸と腰がやたら大きい中年の女があらわれて、ユアンと呼んだ
 フィーネをここに連れてきた男に抱きついた。


   「ひさしぶりだね、バーバラ」


 抱きつかれた男もそう言って女の身体に腕をまわす。


   「まったく、いつもなんの前触れもなく、ふらりと現れるんだから」

   「ごめんごめん、またしばらく厄介になるよ」

   「しょうがないね、好きにおしよ」


 しょうがないと言いながらも、女は嬉しそうな顔だ。

 その顔に満足したように微笑むと、ユアンと呼ばれた男は
 女の頬にキスを落とす。

 フィーネがいるのにも構わず、いちゃ、いちゃし始めた二人に
 フィーネは呆気にとられたが、そのうち女がやっと気がついた
 というようにフィーネを見た。


   「ところでなんだい? この女は」


 バーバラの問いに、ユアンもこちらを向く。


   「ああ、彼女は......」

   「まさか、あんたの新しい女かい? 娼館に女を連れ込むなんざ
    いい度胸しているじゃないか!」


 そう叫びながら、バーバラはユアンの腰をつねったらしく、ユアンは
 言葉を切り顔を歪めたが、フィーネはバーバラの言葉に
 飛び上がらんばかりに驚いた。

 娼館ですって?!

 じゃあ、私、ここに売られるってこと?
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