甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
もし、ユアンの気持ちが本当だったら? そしたら......。
気を紛らわそうと踊りに目を向けていたフィーネは、いつの間にか
ユアンが目を開けて、フィーネを見ていることに気づいて声をかけた。
「寒くない?」
そう聞いたのに、ユアンは見当違いなことを言う。
「日の光が透けて、フィーネの瞳が不思議なことになってる。
淡くなったり、濃くなったり、次々と印象が変わる」
「そ、そう?」
そう言われても、自分で自分の瞳を見ることはできないから、曖昧に
頷けば、ユアンがゆるやかに笑った。
「この不思議な瞳のせいかな、僕が変わることに気づく奴なんて
いなかったのに、君だけは本当の僕がわかる」
眩しいものでも見るように、ユアンは目を細めてフィーネを見る。
「こんな神話がある......遥か昔、神と人間が争っていた頃、デルタ男神が
瞳の色を変え、人間の姿になって人間のある部族のところへ潜りこんだ
誰も彼が神だとは気づかない。でも、たった一人、部族長の娘が、
彼の正体を見破るんだ。
彼女は、淡く濃く色を変える不思議な瞳をもっていた。」
「私みたいな......」
「そう。最初は争っていた神と人間も、お互いに歩み寄り、神と人間が
交わったその子供が、この国の王族の祖だと言われているけど、
王族について記した古い文献には、彼らが確かに、神の力を受け継いで
いたことが記されている」
「神の力って?」
「空を飛んだり、手を触れず物を動かしたり、姿を変えたりする力。
時代とともに、そういった力をもつ者の記述は減っていくけど」