甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
そう言ってユアンは言葉を切ると、手の甲を額にあてて目許を隠した。
「僕の母が......」
そしてまた、言葉が途切れる。
フィーネは辛抱づよくユアンの言葉を待った。
「夢見るように言っていたことがあるんだ、いつか宮殿からお迎え
が来るかもしれない、だって私は王子様に愛されたんだからって。
そんなの馬鹿げた戯言だと思っていたけど、今も王族に神の力が
受け継がれているとしたら......僕が姿を変えられるのって......」
息を吐き、顔を半分隠したまま、ユアンは口許を歪める。
「でも、なんの根拠もない話だ、もしそうだったら自分の血が少しは
まともかもしれないと思いたいだけ。本など読まない母が、王族の力
なんて知らず、化け物と言い続けたことに、抗いたいだけだ」
そう吐き捨てるように言い、ユアンはまたしばらく黙ったが、後悔を
滲ませた声で、さらに言葉を続けようとした。
「バカなこと言ったよ、忘れてくれ、今の話は......」
でも、その言葉をフィーネは遮る。
「私、セオに言われたことがあるの、姿を変えたユアンがわかる
フィーネの力だって異常だろって。 だから、あなたが自分の
ことを化け物だって思っているのなら、私だって化け物だわ」
「......」
「まぁ、化け物でもいいんだけど、デルタ男神の姿を見破った
女の子の方がやっぱりいいかな。 神の姿を見破って、その部族長
の娘はどうなったの?」