甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ユアンはもう、目を開けなかった。
「嫌よ、死なないで、目を開けてユアン。私も......私も、
あなたを、愛しているの!」
こんな終わり方は嫌だ、誰か、お願い、ユアンを助けて。
その時、フィーネの頭の中に、声が響いた。
_ _それが、本当の迷いない、願いか?_ _
聞き覚えのある声、それは、あの湖の精霊の声だった。
_ _ なにをおいても叶えたいと思う、心の底からの願いか? _ _
なぜ、今、こんな声が聞こえるのか、と戸惑いと訝しみがフィーネの内に
湧き上がる。
でも、ユアンに死んでほしくないと思う気持ちは、迷いない願いだ。
あの時、湖の精霊は、フィーネが本当の願うものを決めた時、その願いを
聞き届けようと言った。
だとしたら......。
「そうです。ユアンを死なせないで、私の元へ返して」
突然、強い風が吹き、眩い光があたりを覆った。
_ _ よかろう、だが、死を司る神は少々気難しい、貢物として彼が持つ
ものを頂いていく _ _
強い風に目をつむったフィーネが恐る恐る目を開けても、ガランとした工房の
中はなんの変わりもなく、シンと静まり返っているし、ユアンもまた、胸を血で
染めたまま、青白い顔で横たわったままだった。
フィーネは惚けたように、あたりを見回す。
なにも変わらないの?
日が沈んだのだろう、窓から差し込んでいた夕日が薄れ、急速に工房の中
が暗くなっていくことだけが、目に見える変化だった。
だが、その時、微かにユアンが呻いた。
「うっ......」
「ユアン!」