甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 蒼白かった頬にわずかに血の色が戻り、フィーネが声もなく見つめる
 なか、ユアンがゆっくりと目を開ける。



   「ユアン!」


 もう一度、夢中でその名を呼べば、ユアンはフィーネに視線を向け、
 そして、まるで身体中の空気をすべて出し切ってしまうかのように
 長い、長い息を吐いた。



   「僕は......生きてる」

   「ええ、そうよ」

   「変だな、確かに命が尽きたように感じたのに」



 何事もなく起き上がりながら、ユアンは自分の胸に触れた。



   「血も止まってる、それに......傷跡ひとつない、どうしてだ?」



 視線を彷徨わせ、宙を見つめてユアンは考えこんだ。



   「なんだっていいじゃない、助かったのよ、あなたは生きてるの」



 ユアンが生き返った、フィーネの願いは叶ったのだ。

 嬉しくて、嬉しくて、涙が溢れる。

 ああ、ありがとう!!! 湖の精霊、それに、少々気難しい死神様!!!



   「なんだか変な気分だ、でも、本当に生き返ったのなら確かめな
    きゃな」


 そう言って、ユアンはフィーネを見つめ、頬を濡らす涙を優しくはらうと、
 両手でフィーネの頬をつつみ、そっと顔を近づけた。



   「薄れていく意識のなかで確かに聞いた」

   「え?」

   「 ” 嫌よ、死なないで、目を開けてユアン、私も、私も、あなたを
    愛しているの ”、だっけ?」

   「うっ」



 死にかけてたくせに、どうして一言ももらさず覚えてるの?!
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