甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 
(14) epilogue

 袖口のグリーンサファイアのカフスの具合を調節しながらユアンは隣の部屋
 に続くドアを見やった。

 ......もう、準備はすんだかな?


 さっと鏡を一瞥し自分の身なりを今一度確かめると、ユアンは部屋を横切り
 隣の部屋に続くドアを開ける。

 ユアンのいた部屋よりは少し小さいその部屋には、鮮やかな若草色のドレス
 を着た女性がいて、壁に取り付けられた大鏡にむかって、落ち着きなくドレス
 を揺らしてなにかぶつぶつ言っている。

 そちらに向かって歩いて行ったユアンの姿が鏡の端にうつり、その女性と
 目があった途端、ぱっと彼女は振り返った。



   「ユアン、やっぱり私、変じゃない?」

   「ちっとも変じゃないよ」


 そう言いながら、その女性の真後ろに立ったユアンは、愛しげに名を呼んだ。



   「きれいだよ、フィーネ」






 今宵、王都デルタにある王立劇場で、ある芝居が千秋楽を迎える。

 七ヶ月前、エイヴォン王国のある地方都市で上演されたその芝居は、瞬く間に
 人々の興味と関心を集め、各地で上演されてきたが、ついに王立劇場で
 上演されることになった。

 そして最後の公演日の今日、国王デルフォス七世が、来場し芝居をご覧になる

 デルフォス七世はこの芝居にいたく関心を持ち、脚本を書いた者を”御前に”と
 希望した。



   「国王陛下がユアンの作品を気に入って、あなたに会いたいというのは
    わかるわ、でも、なぜ私までなの?」



 _ _ 御前には、妻、フィーネ=ヴィードも伴うように_ _


 それは、王室の祖といわれる、男神と人間の娘の話をもとにしたこの芝居の
 脚本を” 王室に捧げるためにかかれた作品 ” と王室顧問官が言ったことに
 対して、ユアンが ” これは妻に捧げたものです ”と答えたことが原因だが
 ユアンはしらばっくれた。



   「さあ、なんでかな、国王のきまぐれだろ」
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