甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 軽くそう言いい、鏡に映るフィーネを見る。

 貴族に扮することなどもうなくなっていたから、久しぶりにフィーネを
 着飾ることができて、ユアンは満足だった。

 若草色の布地に豪華に銀糸で刺繍の施されたドレスは、フィーネにとてもよく
 似合っているし、カフスと同じ色のグリーンサファイアが、ゴールドの
 チェーンの先でフィーネの胸元を飾っている。

 愛しい妻の姿がうつる鏡を見つめながら、満足げに微笑んだユアンは



   「チェーンに髪が絡まってる」


 と、フィーネの項に手をのばした。

 そして、絡まった後れ毛をはずしているうちに、ユアンはフィーネの首筋に
 口づけしたくて堪らなくなった。

 フィーネの心を手に入れてからの二年間、どれだけそのしなやかな首筋に
 熱い唇を這わせたかしれないのに。



   「あっ......」



 昂ぶる気持ちを抑えきれなくて、そっと唇をよせれば、フィーネは敏感に
 小さく声をあげる。



   「ちょ...... ユアン......」



 逃れようと身をよじるから、両手でフィーネを抱きしめる。



   「これから国王陛下に会うのよ」

   「大丈夫、激しくはしないから」

   「そういうことじゃ......あっ」



 伏せていた目をあげると、鏡の中に頬を真っ赤に染めたフィーネがいて
 何度触れてもそうやって赤くなると、くすっとユアンが笑った隙をついて
 フィーネが振り返った。



   「ちょっと!こんなことしてる場合じゃな......」
 
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