甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 詐欺はやめた。

 力を使えなくなったこともあるが、ブルー・サファイアを最後にユアンは
 詐欺を働く理由を失った。

 もう過去に縛られたくない。

 ユアンが欲しいものは、過去に復讐することではなく、未来になり、
 ありえない早さで、フィーネとの結婚証明書を役所に提出して
 フィーネもまわりの者も、みな唖然とした。

 そして、” 書くこと ” に専念し、ユアンは精力的に芸術活動に
 取り組み始める。

 自分の作品を専属で上演する劇団と劇場を手に入れ、セオを劇場の支配人と
 し、その助手としてマリーを身請けし、仲間に加えた。

 そして、そのセオとマリーの間でなにがどう進行したのか、” 結婚した ”
 という事後報告を一ヶ月前に受け取って、今度はユアンが唖然とした。



   「そろそろ時間じゃないか」



 国王との謁見のため、黒い光沢のあるイブニングコートで正装したユアンを、
 セオは目を細めてみる。



   「やっぱりお前はそういう格好が似合うな」

   「よしてくれ、これが最後だ」

   「わからんぞ、お前を気に入った国王はお前を王都に留め置くかもしれん
    そうなりゃ、そういう格好をする機会もまたでてくるだろ」

   「こんな、貴族がうじゃうじゃいるところなんか、まっぴらごめんだね」



 そうか、とセオは低く笑ったが、ユアンは別のことを考えた。

 フィーネはどうだろう、もともと貴族の生まれのフィーネは?



   「いいですか、ユアンさん、謁見が終わるまでもうフィーネさんに
    手を出さないでくださいね」



 マリーの尖った声で振り向くと、口紅を塗り直し、ほつれた髪をきれいに
 なおしたフィーネがいて、警戒するような目でユアンを見る。



   「神に誓って......それでいいかい?」



 真面目な顔でそう言って、やっと表情をゆるめたフィーネの手を、ユアンは
 完璧なエスコートで持ち上げた。

 
 
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