甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
(3) 娼館で暮らす?!
次の日、見慣れない娼館の一室で目を覚ましたフィーネは
昨日のことが夢ではなかったことに、がっくりと肩を落としたが
気を取り直して立ち上がった。
服のまま寝たから、ドレスはしわしわのよれよれだ。
一つに纏めていた髪もぼさぼさで、留めていたピンは曲がってしまい
フィーネはため息をつきつつ、ピンを抜いて髪を下ろす。
顔も洗いたいし、喉も渇いた、とにかく下に降りてみよう。
部屋から出て、一つ一つ確かめるように足を進めれば、二階は客のため
の部屋のようで、階下に降りれば、年老いた女が一人、厨房で鍋に
向かっているのが見えた。
「あの、お水を一杯いただけませんか、それに顔も洗いたいん
ですけど」
声をかけたフィーネに、その女は、フィーネが誰かと尋ねることもせず
そっけない答えをよこす。
「裏口から出れば、井戸がある」
教えられた通り裏口から出れば、そこは中庭で、井戸があった。
庭を挟んだ向かいにもう一つ家があり、そちらを気にしつつフィーネは、
井戸水を汲み上げ、顔を洗い、喉を潤した。
もう日は結構高く登っていて、今日も一日よい天気だと青い空が
教えてくれる。
信じられないような不運に見舞われても、美しい朝はちゃんとやって
くるんだなと、酷い状況にもかかわらず(いや、酷い状況だからだろうか)
呑気なことを考えながらぼんやりしていたフィーネは向かいに立つ建物に目を留めた。
あの建物は、なにかしら?
それほど大きくはない二階建ての家。
興味にかられ、フィーネは、その建物へと足を進めた。