甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「伯爵家には二人の娘がいて、上の娘には婚約者がいた。
家庭教師として働いていたその女の子は、夜会の晩、
そのハンサムな婚約者と出会い、運命的な恋に落ちる」
「きゃーっ ♡」
ユアンの言葉を聞き騒ぐ女の子たちを眺めながら、フィーネは唖然と
した。
運命的な恋ですって?!
「ね、それが今度のお芝居になるの?」
「うん、そうかもね。まだはっきりとは、決めてない」
問いかけてきた娘に、ユアンは極上の笑顔をみせると立ち上がった。
「さあ、おしゃべりはもうお終い。」
ユアンの声に娘たちも渋々といった風でたちあがり、こちらに歩いてこようと
する。
フィーネは咄嗟に物陰にかくれた。
「ユアンのお話楽しみね」
「家庭教師の女の子の恋が実るといいわ」
「ふふっ」
楽しげに話しながら女の子たちは歩いていき、それを見送ったフィーネは
後ろからぽんと肩をたたかれ飛び上がった。
振り返ればそこには怪訝そうな顔をしたユアンが立っている。
「こんなところで何してる?」
「い、いえ、私は別に、何も、」
吃りながらそう答えたフィーネをじろじろ見ていたユアンは、ズボンの
ポケットに手を突っ込むと、顎をしゃくった。
「ついて来い、朝食まだだろう」