甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「心配しなくても素敵なラブストーリーにしてあげるよ」
「大体それもおかしいわよ。私の身の上話を恋愛話になんか
しないで」
「へぇ? だってラブストーリーだったじゃないか」
そう言うとユアンは、テーブルの上に身を乗り出して、ぐっと顔を
フィーネに近づけた。
「ブランドン伯爵とボルドール家の家庭教師は恋に落ちただろ」
その言葉にフィーネはぐっと喉を詰まらせた。
「ち、違うわ、ブランドン伯爵がちょっと恋に迷っただけで、
私は何も......」
「僕の記憶によれば、彼女は悩む伯爵に好意を持っていたよ。
いや、好意以上の......」
「やめてよ!」
思わず大きな声をだしてフィーネがたちあがり、フィーネの剣幕に、
ユアンも真顔になって身を起こす。
周りもしんと静まりかえった。
頭に血が上り、まるで焼けた石を突っ込まれたみたいに熱い。
ここで言うことじゃないと、冷静な声がフィーネの頭の中に響き、
自分を止めようとしているのがわかるのに、心の奥底から湧き上がって
きた言葉は、もう止まらなかった。
「恋に落ちたとしても、その恋はまやかしよ。
だって、ブランドン伯爵自身が嘘の塊だったじゃない!」
言い終わった途端、ぽろっと涙が溢れて、フィーネはあとも見ずに
食堂から駆け出していた。