甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 マリーがお姉さんたちというのは、この娼館で働く娘たちのこと
 だろう、だって渡されたドレスはどれもひらひらで、フィーネが今まで
 一度も着たことがないくらい胸ぐりが深く開いている。


   「着替えがないと困るだろうからって、ユアンさんが」


 あいつが?


   「あ、それからこれも、ユアンさんが」


 そう言って、マリーはアイビーグリーンのリボンと小さなブラシも
 取り出した。

 リボンはお古には見えなかった。

 上等な物なのか、深みのある緑が綺麗な色だ。

 これも......あいつが?

 尖っていた気持ちが少しだけ緩んだが、差し出されたリボンに、
 フィーネはなかなか手を伸ばせなかった。

 じっと見つめるだけで、なかなか受け取ろうとしないフィーネに焦れた
 のか、マリーはリボンとブラシを押しつけるように渡すと、声を潜める。


   「ユアンさんからリボンを貰ったことは、内緒にしたほうがいいですよ
    お姉さんたちが妬くから」

   「えっ」


 戸惑ったフィーネに、マリーはいたずらっぽく片目を瞑ってみせた。


   「フィーネさんが慣れるまで、いろいろ教えてやってほしいって
    ユアンさんに言われました。
    で、とりあえず、お風呂にいきましょ」


 気がつけばフィーネは、着替えとリボンを手にしたまま、マリーに部屋
 から連れ出されてた。

 
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