甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
十四の時に売られて、もう一年になる、今はまだいいけど、あと二年も
すればお客をとらされるようになると言うマリーの寂しげな笑顔を見て
フィーネは胸が痛んだ。
この娼館の人たちはユアンの仲間なんだろうけど、マリーが詐欺に
関わっているとは思えない。
もっともユアンが法を犯していると知っていても、弱い立場だから何も
言えないのかもしれない。
「希望を捨てないでマリー、いつかきっとここを出られるわ」
マリーが悪事に手を染めていないなら、ここから一緒に逃げてもいい。
マリーは料理もできるし、ボルドール邸で働くこともできるだろう、
でも、まだすべてをマリーに話すことはできないとフィーネは思った。
ユアンについても、なぜ瞳の色が変わるのかとか聞きたいことはいろいろ
あるけれど、ユアンの秘密を知っていることを、ここの人たちに知られて
いいのか悪いのか判断がつかない。
マリーはいい娘だ、と思っているのに、フィーネの心のどこかがマリーの
事を信じてない。
目で見るもの、聞かされる言葉が真実とは限らないと、心のどこかで
ブレーキがかかる。
「フィーネさんに言われると、なんか本当になる気がします」
フィーネの言葉が嬉しかったのか、マリーは明るい笑顔を向けてくれたけど
フィーネは心の底から、笑い返す事ができなかった。