甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 騙され屋敷も財産もなくし、誘拐されて、娼館で暮らし、その上
 こんなことになるなんて......じんわりと涙が滲む。
 
 怖くて、悲しくて、悔しくて、身体を震わせ、涙を浮かべ震えるフィーネを
 見て、男が舌なめずりをし、ひひっと笑った。


   
   「いいねぇ、ソソる......」

 
 
 そして、さらに大きく胸元を広げようとする。

 だがそのとき、誰かが、フィーネに覆いかぶさっている男の襟首を掴み
 ぐいっと男をフィーネから引き剥がした。

 絞った弱い室内の明かりにも輝きを失わない金の髪、
 高くないが、均整のとれたすらりとした後ろ姿。

 ベッドから転げ落ちた男の前に、立ちふさがるように立ったのは
 ユアンだ。

 えっ? ユアン?
 

 突然の出来事に、男は尻餅をついたまま、ぽかんとユアンを見上げていたが
 勢いよく立ち上がると、赤い顔を怒りでさらに赤くさせながら叫んだ。


   
   「何しやがる!」

   「勝手に人のものに触らないでくれる?」

   「はぁ?」

   「僕のものだから、この女は」


 
 至極当たり前のことのようにそう言ったユアンは、ちらりと
 フィーネを振り返った。

 ちょっと待って、僕のものってどういうこと......。


   
   「私はものじゃないわよ! それにあなたのものになった憶えはないわ」



 さっきまで涙を浮かべていたのに、怯えた気持ちも、涙も、知らぬ間に
 どこかに吹き飛んで、思わずそう言い返したフィーネに、ユアンは盛大な
 しかめ面をした。

 なによ、その顔......。

 
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