甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
だが、男が腕を振り上げた次の瞬間、ぐえっと蛙が潰れたような声を
だしたのは、酔った男の方だった。
ユアンの拳が男の腹にめりこんでいる。
ゆらりと身体をゆらした男は、どぅと派手な音を立てて床にのびて
しまい、その音に空いていた戸口から、禿げた頭を光らせた別の
酔っ払いが顔を覗かせた。
「なんだぁ なんだぁあ〜」
焦点の定まらない目で部屋の中を覗き込んだ酔っ払いは、倒れている男
を見ると ” ビルじゃねえか ” と言いながら部屋の中に入ってくる。
ユアンは、”ちっ” と舌打ちすると、ベッドの上で
ぽかんと口をあけていたフィーネの腕をぐいっと引っ張った。
「騒ぎになるまえに、出るんだ」
「は、は.....い」
強く引っ張られ、乱れた姿もそのままにフィーネはベッドからおりると
ユアンとともに部屋を出た。
勢いよくフィーネの手を引き早足でユアンが歩くので、フィーネは
小走りになる。
廊下を突ききり、階段を降り、食堂をぬける。
フィーネの息は上がり、足がもつれそうになったが、ユアンは立ち止まらない