甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
だが裏口から外に出るところで、フィーネは足裏に痛みを感じて声をあげた。
「いたっ」
その声が聞こえたのか、ユアンがやっと立ち止まった。
ほっと息を吐いたフィーネが、きつく握られていた指を解き、足裏を確かめると
割れた瓶の破片が刺さり血が出ている。
靴を履く暇もなく、ユアンに連れ出されたから、フィーネは裸足だった。
破片がささった足裏は、見た目は痛そうだがたいしたことはない。
「大丈夫よ」
そう言いながら屈んで破片を取りのぞき、立ち上がろうとした時
フィーネはふわりと自分の身体が浮くのを感じた。
膝裏にユアンの腕があり、身体がぴたりとユアンの胸に添う。
ユアンがフィーネを抱き上げていた。
「きゃっ」
落ちそうになって目の前のユアンの首に腕をまわしたから、身体はさらに
隙間なく近づく。
「しっかり摑まっていろ」
フィーネを抱き上げ、そう言ったユアンは、中庭を突ききり、いつかの
もう一つの建物の方へと歩き始めた。
いったい、この状況はなんだろう......。
あまりに近い距離に、頬がかっと熱くなり、心臓がどきどきする。
先ほどユアンが一撃で男を倒した時のことを思い出して、身体に触れている腕
の逞しさを感じると、胸の高鳴りはありえないほど速くなった。
頭がぼぅーとして、身体に力が入らない。
きっと信じられないくらい顔が赤くなっている、そんな顔、ユアンに
見られたくない。
そう思って身をすくませれば、ますますユアンの身体に寄り添う
ことになって、身体中が熱くなる。
頬を赤く染めながら、ユアンの胸に頬を寄せフィーネは堪えきれない
熱をそっと逃した。